読書メモ:「ピアノマン『BLUE GIANT』雪祈の物語」

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こんにちは、つたちこです。
「BLUE GIANT」は原作まんがも映画も面白かった!

特に映画は原作をベースにしつつ音楽を聞かせることを中心に改変されてて、それはそれで良かったです。

でも圧倒的な音楽はよかったけど、その分ストーリーの細かい部分は端折られがち。
まあそれは仕方ないと思ってましたが、それをまるっと補完しているのがこの小説「ピアノマン」でした。

(以下、ネタバレがあります。)


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Twitterで読んだ方の声を見かけ、私も読んでみました。
タイトル通り、ピアノの雪祈が主人公。
彼が生まれてからどんなふうに音楽とピアノに触れてきたのか、何を感じてきたのか、大との出会い、玉田へひっそりした優しさ、プライド、アドリブ演奏の苦悩、などなど、映画や原作では語り尽くせない雪祈の視点からの物語でした。

あっという間に読み終えてしまった。
物語としては原作ではなく映画ベースです。結末も。

あの斜に構えた感じの雪祈の中にある熱い感情、悩み、大や玉田への思いなど、ここまで細かく書くか! ってなりました。

雪祈が「内臓をひっくり返すくらい自分をさらけ出すソロ」が出来なくて悩みまくり、その後それを突き抜けるシーンがあります。この小説ではそのシーンも丁寧にえがかれてて、雪祈が幼い頃に感じてた(でもすっかり忘れていた)「音の色」という要素で表現されているのが面白かった。
これは映画にも原作にもない表現。
音はもちろん絵もない小説で、どうジャズの演奏を表現するのかと思っていましたが、色か! と驚きました。
クライマックスのシーンは文章の勢いが凄くて、ちょっとついていけない表現もなくはなかったですが、その熱量からすごい演奏を感じました。(そのついていけないほどの勢いこそが「内臓をひっくり返す〜」なのかもしれません)
もちろん、文章の中で色を言われても私自身に音楽が聞こえるわけではないのですが、雪祈の突き抜け方ってこうだったんだ! と今までの情報をアップデートしてくれる感じでした。

あと、大や玉田への感情も、こんなに赤裸々に書かれるとこっちが照れてしまう。
超初心者だった玉田にきつくあたっているように見えた雪祈でしたけど、その裏で玉田がジャズドラムで何を学ぶべきかを調べて少しずつ指南していたり。
映画でも母親にドラムの学び方を聞くシーンがたしかチラッとあったと思うんですが、小説ではそれ以外にも知り合いのドラマーに電話して聞いて全部メモして、それを玉田の進み具合を見ながら少しずつ伝える(ツンデレ具合がすごい)。

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後半は、玉田はJASSの音楽とコミュニティの土台になっていて、玉田が居なければ成り立たない、とまで雪祈は思ってたと。
まじか。
それを踏まえて、SO BLUEライブ直前の別れ際に、玉田に「うまくなったな」って一言だけ伝えるのね。
(これがまさに「THEフラグ」って感じなんですけども!!)

事故後も、映画や原作では大・玉田側しか出てこないですが、「ピアノマン」では病院のシーンや主治医とのやり取り、ライブにどうしても出るためにしたこと、などが丁寧に描かれます。

もうなんていうか、オタクが脳内で勝手に補完する部分を全部対応してくれた感じですね。

この小説を書かれた南波永人(NUMBER8)さんは、「BLUE GIANT」原作のストーリーディレクターであり、映画の脚本をかかれた方だそうです。
つまり公式。
1本の小説として、というよりは、映画「BLUE GIANT」をより深く理解するための補足本として最強だと思いました。
まんまともう一度映画が見たくなってます。

【余談】
ただ、私はクライマックスのSO BLUEでのライブシーンは、原作のほうが好きなんです。
山岳のいいところも厳しいところも全部描いてる「岳」の人だからかもしれません。
現実は優しくないし、どうにもできない辛いことがある、でもそれを乗り越えていくしかない。みたいな厳しさを感じる原作。
やるせなさはあるのだけど、それを乗り越えてそれぞれの次に向かう3人がいいなあ、と。
(原作でも雪祈は音楽を続けていて、ジャズで繋がり続けて明るい兆しはあるのだ)

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この記事を書いた人

つたちこ

フリーランスのwebディレクター。基本方針は、健康的においしい食べ物とお酒を楽しむこと。できるだけご機嫌で生きていきたい。
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