普通を描いた「獣になれない私たち」の日常は続く

こんにちは、つたちこです。
毎週楽しみにしていたドラマ「獣になれない私たち」(通称「けもなれ」)が終わってしまいました。

序盤何度か出てきた「恋に落ちるときに聞こえる鐘の音(でもどんな音か具体的にわからない)」という伏線を見事に生かした、でも無理にドラマチックにせず、余韻を残したエンディング。

今後の二人、いや他の登場人物たちもみんな、この後も、仕事も恋もするし、おいしいビールを飲んでストレス解消しながら、生活していくんだろうな、としみじみ思いました。

メインイメージとタイトルロゴのポップさは、ちょっと詐欺だと思う。
※画像は公式サイトより。

 

中盤、中だるみしている、という意見もSNSで見かけましたが、あれは丁寧に日常を描いた故のことではないかな。
私には全然「中だるみ」には感じなかった。

ただ、見る人を選ぶ、というか好みがくっきりと分かれる気はする。

地味なのだ。

丁寧にリアルな世界を描いているからこそ、劇的な進展はそれほどない。
日常で発生する山や波は、それほど「ドラマチック」ではないことのほうが多いじゃないですか。

ぱっきり結論が出ることも少ないし、うじうじ悩むしなかなか決断できないし。

それでも、その日常の(一見それほど大きくはないが本人にとっては大事な)山や波が描かれるのが「あるある!」と思うからこそ共感を生む。
逆に「そんなリアルは現実だけで十分、ドラマくらい明快に!」という人には「つまらん」という感想を抱かせてるようでした。

 

印象に残っているのは、9話で、晶が社長に向かって、仕事の無茶ぶりや言葉での暴力について初めて吠えた(しかも自分ではなく朱里を思って吠えた)とき。
普通のドラマだったら、周りで見ているメンバーが「晶さんの言うとおりだ!」なんていう風に助け舟を出してもおかしくない展開。

でも誰も一言も発しない。
周りにいて注目はしているけど、ただ黙ってみているだけ。
内心賛同していたとしても、みんな自分の人生あるから、恐怖政治に声をあげることができない。

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実際の会社なら、たぶんこうなるだろうと思う。
人にはそれぞれ事情があるのだ。
一緒に吠えられるひとは、そういない。
そのリアルさよ。

吠えられた九十九社長も、晶の渾身の訴えに動じることもなく、改心することもなく。
「お前なんか代りはいくらでもいる、いやなら辞めろ」といわれて、存在を否定されちゃう。

社長にも同僚にも、あんなに一生懸命全力でサポートしてきたのに。
なんという絶望。

 

実は私もそのとき「だれか1人でも声をあげて晶をフォローするだろう」と思っていました。
ドラマだから。

でも裏切られた。誰も動かなかった。
晶の激昂に共感したからこそ、そのあとの絶望感といったらなかった。

ファンタジーな視聴者の期待をリアルで裏切るという意味で、ジェットコースタードラマなのかもしれない。

 

晶以外の他の人たちも。

恒星は粉飾決算を断ろうと決意して何度も頼むけど、どうしてもやめさせてもらえず。
朱里はせっかく始めた仕事で一瞬浮上するけど失敗し、再び引きこもり(ネットカフェに、だけど)。
京谷は晶に振られたけど、未練たらたらで諦めきれない。

日常はドラマチックではないのだ。
苦しいことからなかなか逃れられない。

 

同時期にやっていた「SUITS」も観ていたんだけど、とても対照的だった。
「SUITS」は、現代劇ではあるけど、「実際にありえない」という意味でとてもファンタジーだった。

大きな弁護士事務所で「弁護士」を詐称するという荒唐無稽な設定。
高級そうなスーツをみんなばっちり着こなして余裕ある対応。
都心の高層ビルにあるキラキラしたオフィスで働くかっこいい女性陣。
仕事はみんなできる人ばかり。どんなことをしても「負ける」なんて考えられない。(勝つためなら、弁護士の癖に犯罪行為すらする)
アメリカンな芝居がかった話し方。
庶民には考えられない桁のお金の話。

どこにあるんだそんな世界。

ツッコミどころはありつつも、ハラハラさせた気持ちを最後には決着させる、カタルシスのあるストーリー。
こういうメリハリあるドラマを望むなら、「けもなれ」は「つまらないドラマ」に感じるだろうと思う。

 

身もふたもない言い方をすると、「けもなれ」は、主人公二人が無職になって先が見えないまま終わるという結末。
恋人としてもスタートしそうだけど、今後うまくいくかどうかはわからない。

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「新しいやりがいのある仕事で再スタート、さらに新たな恋人とキラキラした将来が見えて終わり」じゃないところもリアル。

 

晶も恒星も、まわりに叩かれまくった結果、このままじゃ自分で死に向かうような気持ちを抱えて耐えきれなくなり、なんとか自分の力でレールから降りた。
結果、二人はほぼ同時に仕事をやめて、恒星は公認会計士という資格と住処も失った。
晶はしばらく失業手当で暮らすという(とはいえ自己都合退職だから、3か月は待機期間よね……)。

夢がない。

でも「何にもないんだよ、命があっても人生終わり」と落ち込む恒星に晶が言った
「終わってないよ、変わっただけ」
というセリフが、いろんな思いをため込んだまま見ている人の背中を押すような気がしました。

日常は、そんな簡単に終わらない。
ささっとかっこよく転身もできない。
でも自分の力で、少しずつ変えていくこともできる。
将来は見えなくても、今の表情はすっきりと明るい。

 

「ラブかもしれないストーリー」というキャッチコピーでしたが、ラブも仕事も人としての尊厳も成長も、重なるようにテーマに含まれていました。
人が生きていくことは単純には行かないですもんね。
本当に、よいドラマでしたよ。
(もっといろいろ思うところがあるのだけど、うまく言い尽くせないところが悔しいなあ……)

 

見逃した場合は、ネット配信Huluで、ぜひ!

獣になれない私たち
深海晶、30歳。「常に笑顔」で「仕事は完璧」、誰からも好かれ、愛されている女。根元恒星、33歳。「世渡り上手」で「人当たりがよく」、女にモテる敏腕会計士。人生うまくいってるようで、ままならない二人が仕事終わりのクラフトビールバーで偶然出会った。赤の他人だからこそ本音でぶつかる中で、傷つきながら自分らしく踏み出す姿を時に...

 

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