ジャムの脱気と煮沸消毒の謎を考える

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こんにちは、つたちこです。
ジャムやらマーマレードやら梅ピュレやら、作って保存するのが好きです。
出来上がったときの達成感がたまりません。もちろん食べてもおいしい。

これまでの私の衛生管理

私の作るジャム類は自家用なので、衛生管理は自己責任。
私の場合、入れる前の瓶・蓋の煮沸消毒はしますが、中身を入れたあとはそのままです。
なので、出来上がったものは食べるまで冷凍保存してます。

なぜなら世の中のジャム保存方法として書かれた衛生管理方法に、謎、というか、納得いかないことがいろいろあったからです。

ずっとモヤモヤしてたのですが、いろいろ調べて、ようやく納得いくようになりました。

写真:梅ピュレの完成
最近作った梅ピュレも食べる分以外は冷凍保存してます

「脱気」の謎

脱気とは、ジャムなどを瓶につめたあと、熱いうちに熱膨張した空気の一部を抜いて、ビン内の気圧(内圧)を下げることです。
脱気後、瓶・中身が冷えると空気が収縮、蓋を密着させて密閉、保存性を高めることができるそうです。

熱いジャムを入れて蓋をし、内圧が高まったところで少しだけ蓋を緩め、中の空気が「シュッ」と出たら閉め直す、という技です。

いやいや、その緩めた瞬間に、外の空気(雑菌込み)がまた入っちゃうのでは!? と思っていたのですが、どうやらその「一瞬で締め直す」であれば出てく空気のほうが勝るようです。気圧の差を利用する技。

いままで、脱気をしなくても、だいたい冷めると蓋が「ペコン」と音を立てて凹むので、内圧下がって大丈夫だ、と思っていたのですが、それをより強化する策ですね。
脱気は基本中の基本ぽい。

参考:ジャム瓶等のガラス瓶の脱気について

「最後に瓶をひっくり返す」の謎

よくジャム制作工程最終盤で見かけます。
中身を詰めたあとに、瓶をひっくり返している風景。

これも「脱気のため」と書かれていることが多いのです。

いやいや、空気は中身(ジャム)より軽くて上に行くから、ひっくり返しても絶対空気抜けなくない? 瓶内を空気が移動するだけでは。
ひっくり返して空気が抜けるなら、中身が漏れるのでは?
と思ってました。

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参考:ジャム瓶等のガラス瓶の脱気について

これについては、上記参考サイト(包装容器やさん)で

加熱殺菌後に瓶を反転させれば脱気できるということはあり得ません

ジャム瓶等のガラス瓶の脱気について

と明言されていて、「だよね!?」ってなりました。自分の感覚はあっていた。
(一方「本に書いてあったからとかインターネット上(当店もアヤシイかも!?)に書いてあるからと情報をうのみにしない事が重要です。」ともあり、たしかにな、と思うのだった。欲しい情報を探してみちゃうよね。私の記事も含め!)

じゃあ、あのひっくり返す工程は無意味なのか? それにしてはよく見かける。

脱気以外だと「蓋の殺菌・消毒のため」と理由を書いてあるものもありました。
以下のサイトでは「殺菌・消毒」とは書かれてないですが、微生物が育成できなくなる、とあります。

30分間、ビンを逆さにしておくことで、ビンの中に残っている耐熱性の微生物も生育することができなくなります。

農産物の上手な利用法(ナツミカンジャム・作り方のアドバイス) – 神奈川県ホームページ

熱々とはいえ、鍋から瓶に移した段階で温度が下がっているジャム、その温度で蓋が殺菌されるだろうか?
それに加えて、これから食べようという食品で殺菌するってどうなの。ちょっと微妙な気持ち。

今ひとつ納得がいきません。ほんとかな。

いろいろ調べているうちに気づきました。
もしかして、水(水蒸気)をなくすためでは。

食中毒菌が増殖するには水分が必要ですが、糖度が高いと菌が利用できる水分がなくなり(水分活性が下がり)、細菌による食中毒が発生する危険性は低くなります。

ふくしまHACCP導入手引書 瓶詰めジャム編 P3より

熱々のジャムを入れてすぐ蓋をするから、蓋の裏に水蒸気が付き、温度が下がると水滴になります。
その「水」が食中毒のもとになるかも。

蓋の裏の水分はジャムからでた水蒸気なので、それをジャムに戻すためにひっくり返してジャムと水分を一体化させる。そのまま冷ませば、もう蓋裏に水蒸気がつくことがありません。
「水」は瓶内からなくなります。それが食中毒菌の増殖のもとを断ってる、ってことなのかな。

それなら、ひっくり返す意味もある気がします。
でもその場合、熱々でひっくり返す必要があるかな。冷めてからでも同じ気もするけど、熱いほうがジャムと水の混ざり具合の馴染みはよさそう。

※自説なので、違っている可能性がおおいにありますよ!

「煮沸消毒(お風呂っぽい)」の謎

瓶詰めしたあとに、再度沸騰した湯に入れてしばし煮て、煮沸消毒する、というやり方もセオリーです。

これも謎でした。
入れたあとに瓶の外側を再消毒するの? 出して触ったらまたすぐ雑菌がつくよね??

が、これは私の短慮でした。
詰めたあとに15〜20分煮ることで、ジャムの中身や中の空気も再加熱され、中身まるごと煮沸消毒されるってことでした。

加熱調理食品に必要な条件は、

中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で90秒間以上)

4 食事の提供における食中毒予防のための衛生管理(厚生労働省)s0331-10a-011a.pdf

だそうです。これを外部からの加熱(煮沸消毒)でおこなうってことですね。
でもジャム瓶の中身が「75℃」に達したかどうかは、外からは測れません。
湯煎にかける前のジャムの温度にもよるから、沸騰して●分、と書かれている時間も、条件によって変える必要が本当ならあるはず。
ちゃんと測るなら、同じ条件の1瓶を開けて確認するしかないですね。

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参考:
瓶詰めジャムをコンベクションオーブンで殺菌できる? 1 | パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi
瓶詰めジャムをコンベクションオーブンで殺菌できる? 2 | パティシエ 坂下寛志 Pâtissier Sakashita Hiroshi

こちらのパティシエの方はオーブンでジャムを殺菌する実験をおこなってて、90℃設定のオーブン20分でジャムの中身温度が78℃まで上がったそうです。

オーブンで再加熱、やっていいんだ! という驚きもありました(蓋も大丈夫なんだろうか)。

ただ、出来上がったジャムを再加熱することになるわけで、蓋をしているから水分は飛ばないものの、ジャムの風合いなどが変わってしまう可能性もありますね。
どこまで安全性を取るか、という感じでしょうか。

読んだ中には、「本書では脱気しない方法が前提でのジャムの作り方」と書かれた本もありました。
(空気が入らないくらい、フチぎりぎりまで中身をいれる保存方法でした)

物事には理屈あり

ジャムの衛生管理、謎工程多いな〜と思ってスルーしていたんです。自家用だし、まいっか、と。

ちゃんと調べて理屈までわかると、納得感があります。なるほどな!
なんというか、いろんな解像度が上がりました。

大事なのはこのあたり。ふくしまHACCP導入手引書 瓶詰めジャム編 P3を参考にしました。

  • 脱気で酸素のない(少ない)環境を作る
  • 脱気で内圧を下げて、密封で汚染をなくす
  • 瓶詰め後の加熱殺菌で微生物を減らす
  • 酸素がない環境で増殖するボツリヌス菌対策で、水分活性を0.94以下またはph4.6以下に調整する(糖度の問題)

砂糖の量(割合というか)にも理由があります。「保存食」にする以上、ジャムには砂糖をたっぷり使わねば効果が薄れるってことです。味だけの問題じゃないのだ。
毎度大量の砂糖におののきますが、むやみに減らしちゃだめですね。

水分活性を測るのはなんだか大変そうですが、phなら試験紙があればできそうです。

あと、ジャム瓶の蓋。
私はずっと再利用してましたが、蓋裏のパッキンがだめになると密封度が下がるそうです。
ガラス瓶は壊れるまで大丈夫ですが、蓋は新しいものに取り替えるのがよいかも。蓋だけも売ってました。

次に作るときには、詰めたあとの衛生管理工程もやってみようかな。
調べているうちに、調理用の温度計とか糖度計とかph試験紙とか、欲しくなってしまいました。理屈や数値で食の安全確保するの、いいなあ。

やってる工程は一緒でも、それをやる理由がもやっとしていると、「この工程は本当にいるのか?」と思っちゃう。自分がやるときはちゃんと「なんのために」を理解したうえでやりたいです。

参考:容器を扱っている会社の情報が多めです。

ジャム瓶等のガラス瓶の脱気について
瓶の脱気方法 – PAOボトル館
ガラス瓶は再利用できます | ガラス瓶の通販サイト ガラス容器オンライン
【コラム】ジャムなどを瓶詰めして保存するやり方とは?おすすめのジャム容器についても紹介 | 食品容器・ガラス容器の斎藤容器
【コラム】煮沸消毒するのに向いているジャム瓶のキャップの形状とは? 脱気の方法についても紹介 | 食品容器・ガラス容器の斎藤容器

ジャム瓶のツイストキャップの特徴と使い方 | 東静容器株式会社
ガラス瓶は再利用できます | ガラス瓶の通販サイト ガラス容器オンライン
農産物の上手な利用法(ナツミカンジャム・作り方のアドバイス) – 神奈川県ホームページ
ジャム瓶などの煮沸消毒と脱気のやり方:白ごはん.com
ふくしまHACCP導入手引書 瓶詰めジャム編
4 食事の提供における食中毒予防のための衛生管理(厚生労働省)

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この記事を書いた人

つたちこ

フリーランスのwebディレクター。基本方針は、健康的においしい食べ物とお酒を楽しむこと。できるだけご機嫌で生きていきたい。
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