こんにちは、つたちこです。
2月末に、「大奥19巻」が発売されました。
16年続いた連載の最終巻。首を長くして待ってました!
最終巻の表紙は、真っ暗な星空の時代(家光)から夜明けにつながる(家茂) 、歴代の女性将軍たちで素敵でした。
恒例の裏表紙の葵の紋はなかったですね。
もう「徳川家」から解放されるからかな。
最終巻は、通常仕様と特装版の2種。
普段はおまけなどは興味ないので通常版しか買いませんが、今回は「没日後録」と称した冊子が付くと聞き、特装版を買いました。
「没日録」といえば、大奥(まんが)の本当の歴史を記したキーアイテム。
その名をもじった冊子がつくとは! とそれだけで(内容をよく調べず)買いました。
でもこれは大正解だったので、大奥ファンはぜひ、特装版をお勧めします。
(コミックスと同じサイズなので、保管も一緒にできます)
電子版も同じく特装版があるみたいです。
(以下、ネタバレを含みます)
19巻を読む前日に18巻を読み直し、気持ちの助走をつけていざ! と鼻息荒く読みました。
最終巻は、江戸幕府の終焉。
主な登場人物は、徳川最後の将軍慶喜、西郷隆盛、勝海舟、天璋院、大奥総取締の瀧山、出てくる町民たちも含め、 見事にほとんどが男性でした。
表紙の、歴代女性将軍陣の華やかさに対して、画面が重い。
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今までの、赤面疱瘡から始まった「女性が世の中を動かした時代」は、もう遠いんだな、と実感します。
そんな中でいまや大奥唯一の女性「和宮」。
西郷と勝の、江戸への総攻撃をやめさせるための談判に、和宮と天璋院もついていきます。
西郷がとつとつと「江戸を破壊する理由」「慶喜が生きていてはいけない理由」を述べるのは、読むほうもものすごいストレスでした。
「女に政はできん」「女が作ってきた恥ずべき歴史を消し去る」とは。
こいつ、いままでの将軍や側近たちの苦労や涙をなんもわかってない……!!
江戸幕府に、優秀な女性政治家はたくさんいた。
知りもしないくせに、自分勝手な印象で「できない」と断言するな!!
って、読んでる私の西郷に対する反発心が極限までいったときの、和宮さまの啖呵!!
ぶわっと胸が熱くなり、「かずのみやさまー!!!」と喝采を上げたくなる気持ちでした。
家茂との強い信頼が、ひいては家茂が愛する江戸への思いにつながったのだな、と。
そしていまや大奥で唯一の女性になった和宮が、西郷の行動を変えさせた。女が、世の中を動かしたのだ。
今回一番ぐっと来たポイントでした。
和宮は、ほんとにかっこいい。好きだ。
最初(表紙になったころ)はこんな風になるとは思いもしなかった。
大奥最後の花見で、初めて女性として「美しい姫の姿」で皆の前にでたときに
天璋院の「これが真(まこと)のあなた様なのでございますね」に対して
「私はいつだって私です」と返す。
男の恰好か、女の恰好か、なんて自分に関係ない。
かっこいい。
物語は史実に沿ったもの。
私はもともと歴史に疎くて、徳川の歴史も高校時代の教科書で必死に覚えても覚えられず……みたいな記憶なので、こうして「大奥」で語られるのを読むのは新鮮でした。
(男女逆転だけど、史実にかなり忠実に沿っている、というのが素晴らしい)
「徳川家」を存続させるためだけの場所だった大奥。
一つの家の子孫を残すために存在する、ものすごくゆがんだ場所。
それが、男性でも女性でも、逆転しても役割としては一緒なのですよね。
そもそもの始まりのお万の方からして、拉致されるようにして大奥に入れられてるし、家の存続のため、という理由のもとで人としてひどい扱いをされる物語がたくさんあって、つらいシーンもたくさんありました。
一方、喜びやほほえましいシーンもあり、それってほとんどが相手を(子を産む道具としてでなく)人として認めてきちんとコミュニケーションが取れたときのようにも思います。
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特に、終盤の和宮と家茂の交流は本当によかった。
子を産む、という概念から解放された初めての将軍とその伴侶の物語が、自分の中で「大奥」の光でした。
一方で、最後の着地は、途中まではちょっと暗い気持ちでした。
和宮たちの説得によって西郷は江戸総攻撃をやめます。
でも、江戸を守るかわりに、江戸時代はすべて「男性社会」だったと歴史を変えることが条件になり、現在につながるのです。
今までの女性将軍たち、活躍した役人たち(でも名前はすべて男性名)は、全員男性であったことに。
本当のことを記した唯一の書き物「没日録」が燃やされるシーンは胸に迫りました。
女たち、男たちの悲しみや苦痛、大奥であったすべてのできごと。
全部、こうしてなかったことにされちゃうんだ。
これは実はSFではなく、現在につながっている物語なのではなかろうか、と思えてしまう。
歴史は、こうして勝者に都合の良い形にゆがめられるのか、とぐったりした気持ちにもなりました。
でもラストの、天璋院(胤篤)の内緒話はよかった。
アメリカ留学に向かう幼い少女、梅(津田梅子ですよね)に、女でも国を動かす人になれる! と力強い言葉。
そして、最後の胤篤の秘密を打ち明ける言葉は、女が活躍できると知っている人がいて、少しずつ世の中に浸透していった結果が現在なのかもしれない、と思うと少しだけ明るい未来。
余韻の残る、素敵な最終回でした。
あうー、満足しながらも、もうこの先がないのかと思うと悲しい。
もう一度頭から読み直そう!
と、本棚から全部出してみましたが、このボリューム感に圧倒されて、まだ手出ししていません。
ゆっくり読みなおそう。
18巻の感想メモはこちら。
https://tsutachi.co/blog/2020/07/oooku18/