こんにちは、つたちこです。
久々に映画を観に行きました。
観たのは「海獣の子供」。
「海獣の子供」公式サイト
https://www.kaijunokodomo.com/
ネタバレがあります。
これから見る方がいたら、お気を付けください。
Contents
原作の世界観の絵の再現度がすごい
原作の漫画も読んでいたのですが、とても独特の世界観を持つ絵です。
全て手書きで濃く書き込まれ表情や風景。
それらがとてもよく再現されていて、すごい! と思いました。
予告編で見られる「すごい」がずっと続きます。
原作の五十嵐大介さんは、以前NHKの「漫勉」でも取り上げられています。
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これを見ると、その独特の書き込みのすごさがよくわかります。
海が舞台ですが、その海の描写もとても美しい。
水、波、光、たくさんの大小の生き物。
CGを使っているのだろうけれど、アナログっぽい(原作っぽい)線の表現もよくできていて感心しました。
木や建物など背景の色使いもアニメーションらしくなくて濃厚で、とてもきれい。
圧倒的なうつくしい描写と音楽(久石譲)が、とても素晴らしかったです。
大画面&音響の整った映画館で見るべきだなあ、と思います。
人物紹介がちょっと不親切
一方で、人物紹介がちょっと不親切だな、と思いました。
原作は全部で5巻あるので、これを2時間にまとめるのは大変……とは思いましたが、ちょっと登場が唐突すぎて、関係性やどういう人かよくわからないのでは……。
「主人公 琉花視点のひと夏の出来事」に絞った結果、過去や未来の部分をすぱっと外したという感じ。
ちょっと端折りすぎ感があります。
デデ、アングラード、あとジムも「よくわからないおじいちゃん」だった……。
みんな急に概念的な話をし始めるので、説明役みたいでした。
途中から概念の話になってきたら、やっぱりよくわからなかった
原作漫画のほうでも、後半の「誕生祭」に近くなってきてもよく訳が分からなくなります。
映画でその辺をわかりやすくなってるかと思いましたが、わかりにくいままでした……。
なんなら、原作より端折っている分、より分かりにくくなっているような気もします。
宇宙の命の起源とか、宇宙と細胞がつながるミクロとマクロの概念とか、ページを多く裂いても伝わりにくいところを、短い時間で伝えるのはむずかしそうです。
よくわからないながらも、原作の印象と映像で受ける印象は、ちょっと違う感じがしました。
たぶん、もともとの原作からして解釈の仕方がいろいろあって、その辺は見る側にゆだねられているのだと。
それを映画側で解釈されたものを見た結果、私の解釈と微妙に違う印象になったのでしょう。
言葉でその違いを伝えるのは難しい。
うーんでも、もうちょいかみ砕いてわかりやすく(答えを観客にゆだねず用意する方向に)したほうが、映画としてはよかったのではなかろうか。
最後の蛇足感
ここからちょっと批判的な感じになってしまうのですが。
(そして完全ネタバレ内容です)
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物語の最後、主人公琉花が部活でけがをさせた先輩と偶然会うシーンがあります。
琉花がひと夏でいろいろ経験して成長して、相手と仲直りすると思わせるようなシーンです。
ものすごい未知なる体験をしてきたのに、「ひと夏に経験したこと」みたいなモノローグとともに、円満なエンディングに落とした感じがすごく蛇足だなあ、と思いました。
その誰にも理解できない体験を抱えたまま、静かに終わるでよかったのでは……。
なんらかの落としどころがあったほうがよかったのかもしれませんが、「中学生の夏の思い出★」みたいな軽い感じに見えてしまいました。
もったいない。
(このシーンは原作にはなかったシーンです)
あとエンドロール後の加奈子(琉花の母)の出産シーンもちょっと唐突すぎる感じ。
原作だと途中で妊娠を示唆する話が出てきます。
「海ある星は宇宙の子宮」というキーワードがあるから、だと思いますが……。
ちょっといきなりの出産シーンで「??」となりました。
わかりやすさが求められがちな昨今にチャレンジングな映画
今の時代、「わかりやすい」ことが正義みたいなところがあります。
Webコンテンツとかが顕著ですが、短時間でさっとわかることがよしとされます。
じっくり読まないと伝わらないコンテンツは、途中でやめられちゃう。
そういう時代に、2時間かけて「圧倒的な映像と音楽」ではあるものの、よく理解しがたいものを作るというのは、すごい勇気だと思いました。
映画だから(見始めたら2時間付きっきりにならざるを得ない)できることだなあ。
おもしろいから見て! とは人に勧めにくいけど、あの自分も海を泳ぐような感覚になる臨場感ある映像はスクリーンでこそ見る価値ありです。