こんにちは、つたちこです。
何度か書いている、旧作アニメ「ベルサイユのばら」が最終回まで公開されました。(3月14日まで)全部見ました!
子供の頃に見ていたと思っていましたが、やはり断片しか覚えていませんでした。
なので、あとからちゃんと読んだ原作のほうが強く印象に残っているのですが、アニメを見るほどに原作との違いが強烈に違和感となりました。
「テロリスト」サン・ジュスト
アニメでは、原作よりもフランス革命における平民活動家の動きが強調されたように感じます。
その中でもサン・ジュストの動きには違和感がありました。
アニメ中でも「テロリスト」というセリフが出てきて、国王一家の暗殺、オスカル暗殺などを画策(これらはどちらも失敗)。
サン・ジュスト、なにかっていうとニヤリと笑って「僕が処分しますよ」的なすごい過激思想の持ち主になってました。やばい人だ。
吟遊詩人のおじさん
パリの街角でちょいちょい登場、アコーディオンを弾きながら平民のつらい状況を嘆いたり、それでも生きよと励ましたりするおじさん。アニメオリジナル。
ナレーション代わりに解説する役割も持たせていたと思うんですが、登場人物にも視聴者にも結構影響を与えてました。
占い師か? というくらい、いきなり相手の状況をぐさっと指して歌うすごい人だった。笑
最後は革命の影響(?)で亡くなってて、子供に背負われてセーヌ川に流されました。『セーヌに流せ」は彼の遺言ぽい。
そしてその吟遊詩人の持っていたアコーディオンを引き継いて、子供がまた詩を歌っていたのが印象的でした。(あの子供は実子なのか、近所の子なのか)
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セーヌ川、そのまま遺体を流していいの……!? ってなった。(インドのガンジス川的な)
ロベスピエール先生
原作では、平民の味方、おれたちの代表、熱い正義感! という感じでしたが、アニメでは徐々にどす黒い気持ちが見え隠れして、自分の思う通りの革命をするために手段を選ばない、みたいな過激派みが出てきてました。
「テロリスト」サン・ジュストのことも、ただ正義感で止める、というよりは、自分の思う通りに事を進めたいのに勝手に荒っぽいことして(シナリオ通りにならないと)困る、みたいな感じでした。
これは史実にあわせて、のちの恐怖政治に向かう人物だと示唆しているのかもしれません。
オスカルの人格改変がつらい
一番ここがきつかった。オスカル様!!
いろいろあった末に、オスカルとアンドレはギリギリなところで結ばれる。それはもちろん原作通りなんですが。
結ばれるときは、原作ではオスカル自ら「今宵、アンドレ・グランディエの妻に」と告げて意思を持って結ばれるし、その後もオスカルの意思で貴族を捨てて革命に参加する。のですが!
でもアニメでは、結ばれたときにはナレーションが「オスカルはアンドレの妻になった」って説明するし、何よりもその後。
「革命に参加するかどうか」を、アンドレの意志に託すのです!!
「アンドレの妻になったから、夫であるアンドレの指示に従う。アンドレ、命じてくれ。お前の信ずる道は私の道」
エッ。なにそれ!
いきなり「従順な妻」モード。オスカル様、何いってんの!?
思わず見ながら「なんじゃそりゃー」とつぶやいてしまった。
「貴族を捨てて革命に参加」は同じ展開に見えるけど、全然違う性格になっているじゃないか。
その後も、アンドレが銃弾に撃たれ亡くなったときにも、原作では悲しみつつも革命のために指揮を取り続けるのに、アニメではアランに「もうできないから指揮してくれ」と頼んだり(最終的に指揮は継続はするけど)。まあ、アンドレのタイミングも違うのですけど。
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あと、オスカルの亡くなるシーン。
原作では、オスカルは撃たれたあとにバスティーユに白旗が上がるのを見て「フランス万歳」とつぶやいて亡くなる。
仕事をやり遂げた感。撃たれたことは悲劇ではあるけど、民衆の勝利のためにやるべきことをやって死んでいく、意志の強さを感じます。
でもアニメでは爆撃中に撃たれ、そのまま路地裏に避難。まだ戦闘中だったので「攻撃を続けろ」とアランに指示は出すけど、そのままロザリーに見守られつつ「アデュー」で死んでいくのです。バスティーユ陥落を見ることもなく。
勝利への道半ば。でもアンドレのそばにいける、みたいな。さみしい。
ほかはともかく、なんでこの超超重要なシーンを原作と変える?! とどんよりしてしまった。
これは勝手な想像でしかないですが、オスカルを、最後の最後に「女性らしく」「男性を立てる」「男性に頼って生きる」みたいにしたい時代だったのかな。なんだかくやしい。
フランス革命(オスカル死後)
原作では結構しっかりと話数をつかって、オスカルの死後も話が続いてます。
フランス王朝の最後、ルイ16世、マリー・アントワネットの処刑までしっかり描ききって、話が終わります。
が、アニメは最後1話でざざざっと語って駆け足で終わってしまった。
オスカルの死後、数年経過後、母と妹の墓守兼農夫になったアランのところにやってきたロザリーが、史実をつまんで語る、みたいな感じでした。
「オスカルもアンドレも革命後のひどい状況を見なくてラッキーだな」みたいなことをアランが言ってました。うーん、たしかに。
枠が決まっているなかで、あくまでオスカル主役を貫いた感じでしょうか。
でもマリー・アントワネットだってもうひとりの主役だったわけで。なのに最後の扱いは結構ひどかった。
一番盛り上がったのはやっぱり「バスティーユ陥落(オスカルの死)」で、最後の1話は「その後のおまけ」みたいな印象。
原作のように史実をなぞるのは、硬い話も多いし辛いシーンばかりだし処刑シーンもあるし、なかなか難しかったのかな。
しかしこの濃厚&重厚な「ベルばら」を子供向けアニメとして制作したのは、すごいことだ、と改めて。
今年公開した新作映画も、今更ながら見たくなってきました。まだかろうじて1日1回くらいは上映しているっぽいのよね……。どうしよう。