こんにちは、つたちこです。
「サブスタンス」を観ました。以下ネタバレありです。

元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。
ABOUT THE MOVIE | 映画『サブスタンス』公式サイト
接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。
一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。
勢いで観ることにしたので、内容については情報ゼロでした。
あとから「ホラーコメディ」と紹介があるのも見かけましたが、コメディ…? 最終盤のことだろうか。
これは「SFホラー」かな。自分的にはコメディ要素ゼロで、笑うどころか、どんどん薄暗い気持ちになっていきましたよ。精神的に追い詰められる系ホラー。
主人公エリザベスと私の年齢が近いこともあり、その身体的な特徴、この映画の場合「劣化」というべきか、が生々しい。
いや「近い」のは年齢だけです。
エリザベスはとても美しい。レオタードを着ていてもまったく見苦しくない鍛えられた体。女優として一世風靡した美しい顔。50歳としては非常に上位にいる美しい存在。
でもお役御免になってしまう。「もっと若いのがいい」と言われちゃう。
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若い時代にもてはやされた経験があるからこそ、年を経た自分の身体を受け入れるのが辛いのだろうか。
スーのみずみずしさ、シミやシワひとつないハリのある肌、ぱつんと盛り上がる胸におしり。
比較されるたびに、見ている私がどんよりした気持ちになります。そう、50代ってこうなりますよ。(デミ・ムーアの実年齢は62歳だそうですが!)
どんなに美しい人でも、たるむし落ちる。重力に逆らえない。
この映画は、周りの男性からの行動も反吐がでるけど、エリザベス本人が若さと美しさの上位互換「スー」の虜になってしまうところが怖い。男性だけでなく、エリザベスも若さと美しさに重要な価値を置いているから。
なんどもスーを憎むような行動をするのに、でもスーのことは切れない。憎くても自分の上位互換を手放せない。
「どちらもあなただ」というメッセージが何度も出てくるんだけど、自分同士で愛憎ひしめき合ってる。
美容整形って、やり始めるときりがないという話をききます。
それも本来の自分の上位互換だったり、昔の若さを取り戻すための行為だったりするのかしら。
私も自分の顔を手で包んで斜め上に引っ張って「このくらい上がってたらいいのになあ」と思うことはしばしばです。(美容整形は怖いのでやらないけど)
つまり、現状の自分を愛せているかどうか、自分の価値を自分で認めているかどうか、が重要なのかもしれません。
自分で認められないエリザベスが、自分自身の価値(人に求められる存在かどうか)を確認するために、昔の同級生をデートに誘います。
この元同級生との電話も不穏なんですよね。やたら沈黙する。
デートに誘われて嬉しくて驚いて言葉に詰まっているようには見えず、困惑しているように感じるのは、私の感じ方のせいだろうか。本当はどっちだったんだろう。
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で、デート直前。気合い入れてメイクして服も選ぶエリザベス。
なのに、出かける前に気になって何度も化粧を直して、直しても直しても気に入らないし、気合を入れたはずの服も似合わない気がするし、終いには何もかも嫌になってデートをすっぽかしちゃう。
何をしてもだめに見えちゃって、何もかも放りだしたくなる。わかる……!
このときのデミ・ムーアの演技が鬼気迫る。狂気をはらんだ迫力がありました。こわい。女優魂だ。
最終盤は、正直「えーーー、なんでそうなる……?」ってなりましたが、オチを付けるにはああするしかなかったのだろうか。
モンスターと化したスー(の上位互換?)が、エリザベスの顔を貼り付けていくのが皮肉に感じました。
かなりグロテスクでしたが、血糊シャワーはちょっと笑ってしまいました。あ、ここがコメディか?
その最終盤前までの二人の緊迫感ある対立と攻撃は、すごく緊張感があって面白かったです。
よぼよぼエリザベス、めっちゃ動けるな!って思いましたが。
そして、若さ至上主義、上層部は全員男性で決定権も全部男性にあり、経験よりもフレッシュさ、セックスシンボルの豊かな胸とおしりがもてはやされる感じ。
令和時代のアメリカでも、こんななんだなー。まあ大げさにはしていると思いますが。
嫌悪感を生むための演出(と思われるもの)がとても秀逸でした!